それゆけ! 華流迷

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陳情令で中国語 第1回

さて、前置きの第0回に引き続き、いよいよ、ドラマ本編の第1話を鑑賞しつつ、中国語も楽しんで参りましょう。ピンインの読み方の続きは記事後半に置きました。

 

✨今回の目次

 

【あらすじ】第1話

‘陰虎符’をめぐる争いの中、断崖絶壁から身を投げた魏無羨(Wèi Wúxiàn)。16年後、仙師修行の半ばで生家に戻った莫玄羽(Mò Xuányǔ)は、復讐を託すため自らの命と引き換えに彼を蘇らせる。奇しくもその日、莫家に化け物騒動が起き、若い仙師たちが祟りを除くために呼ばれていたのだが…。 
 

と、記念すべき第1話ではありますが、何せ冒頭から得体の知れない人名地名のオンパレードだわ、過去から物語の現在にいきなり飛ぶわで分かりづらいので、もしこれからご覧になるのでしたら、第2話の終わり3分めあたりから見始めて、3話、4話…と続けた方が、順番通りで分かりやすいかもしれません。

 

何せ、そこから長い長い回想シーンに入って、なんと第33話でやっと第1話に話が戻ってくるからです(笑)。

 

こういうやたらに長い回想シーンを‘’回忆杀huí yì  shā ‘’と言いますが、この~(必殺技)には他にも‘摸头杀’‘(優しく頭をなでる。必殺なでなで。恋愛ドラマとかでよく見かけるアレ)などさまざまなバリエーションがございます。

 

えーっと、ちょっと脱線しましたが、頑張って33話まで見たあと、この第1話に戻ってみると、おおっ!といろいろ伏線に気づくので面白いです。ここではネタバレになるので、その辺は33話以降のお楽しみということで…

 

さて、第1話からお付き合いいただけます方は、もう原作もお読みになったかも知れませんが、そもそも冒頭からしてドラマとはだいぶ違いますよね。魏無羨の復活は原作の13年後からドラマでは16年後に延びています。そして、何といっても最大の違いは主人公の容姿。

 

ドラマの魏無羨は回想シーンもそのままですが、当たり前と言ったら当たり前ですけど、‘奪舎’(身体を奪って入り込む)にしろ‘献舎’(自ら身体を提供する)にしろ、身体は他人のものなので、原作では回想シーンは魏無羨の姿、復活以降は莫玄羽の姿をしていて、背の高さからして違います(莫玄羽のほうが背が低い)。

 

なので、誰かと鉢合わせしても、すぐには見破られずに済むのです(ドラマは常に仮面をつけているという設定がちょっと苦しいですね…)が、ドラマでは莫玄羽が身体も復活させた設定になっているようです。でも、肖戦さんが1人2役で演じてくれたら、それはそれで面白かったかも。

 

ついでなので、2人がどう違うか、原作をちょっと見てみましょうか。

(なお、本ブログの日本語訳は基本的に全てこちらで訳したものです。他から訳を引用した場合は、その旨明記いたします) 

(おまけ1)原作の莫玄羽と魏無羨    

まずは莫玄羽のほうから。

水中倒映出来的,是一个十分秀逸的青年。干净得仿佛被月色洗练过,舒眉朗目,唇角微弯。
shuǐzhōng dǎoyìngchūlái de  shì yīgè shífēn xiù yì de qīngnián gānjìng de fǎngfó bèi yuèsè xǐliànguò  shūméilǎngmù   chúnjiǎowēiwān.

(≪魔道祖师≫ 第8章)

(魏無羨が妙な化粧を川の水で洗うと)水面に映ったのは、なかなかに見てくれのよい若者だった。月の光で磨かれたように無垢で、眉目秀麗、口元はかすかに上向いている  
容貌出众…是个极为漂亮的小白脸,平时可难见到这样的人物。
róngmào chūzhòng   shì gè jíwéi piàoliàng de xiǎo bái liǎn, píngshí kě nán jiàndào zhèyàng de rénwù .

(第91章)

抜きん出た顔立ちで…(中略)めったに拝めない、ひときわ水際だった美青年だ。   

続きまして魏無羨。

闻名遐迩的美男子,六艺俱全的风雅之士,在世家公子里品貌排名第四,人语‘’丰神俊朗‘’ー
Wénmíngxiáěr de měinánzǐ   liùyìjùquán de fēngyǎ zhī shì   zài shìjiā gōngzǐ lǐ pǐnmào páimíng dì sì   rén yǔ  fēngshénjùnlǎng ー

(第10章)

美形の誉れ高く、六芸に通じた粋人で、名門仙家の子弟のうちでも上から四人目の好男子に数えられ、快活な伊達男で通っていた。

‘六芸(りくげい)’とは、儀礼、音曲、弓道馬術、書道など諸説ありますが、ここでは「文武両道」くらいの意味だと思われます。

 

こうして比べるとあまり変わらないような気がするんですけど、魏無羨の‘俊 jùn’(きりっとしている)に対して莫玄羽は後のほうの章で‘qiào(あか抜けているという意味なんですけど、女子にも使う)と形容されているので、タイプの違う美しさなのでしょう。

 

原作者によると、外見はだんだん魂の持ち主に似てくる面があるそうなので、話が進むにつれ、少しずつ魏無羨寄りになっているのかもしれません。

(おまけ2)風鈴  

魂といえば、魏無羨が目覚める場面で、軒先に吊るした風鈴が鳴ってるシーンがありますよね。

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第1話から

 突風が吹き抜けるおどろおどろしいイメージをさらに増幅してますが、金属製の風鈴は

邪気除けのほかに、民間では‘ guǐ(幽霊)が鳴らすものとも考えられているそうです。迷信深い人は、日本旅行で風鈴が鳴っているのを聞くとぎょっとするんだとか…

 

魂魄には姿がありませんが、音で意思を伝えるとも信じられています。この作品では後の回で応用編が出てくるので、そのときまたお話ししましょう。

 

簡体字 (简化字)

原作を読もうかと思っても、漢字が並んでいるだけですでに頭が痛くなる方もいらっしゃると思いますが、さらに悩ましいのが日本語の漢字との違いです。現状大きく、

 

簡体字:中国大陸やシンガポールなどで使われている漢字。

繁体字:台湾や香港・マカオなどで使われている漢字。

  (‘繁’には複雑でややこしいという含意もあるので、‘正體字’と呼ぶ人も)

 

 の2種類があり、繁体字のほうもよく見ると日本の旧字体とすっごく微妙に違っているものがあったりして、イラつくときがあります。そのほか、方言専用の漢字っていうのも存在します。

 

簡体字の例としては、

 蓝忘机(藍忘機)

って、机かよ!?とツッコんだ方は少なくないと思いますが、 

 云深不知处 (雲深不知処)

とか最初の字に気を取られがちですが最後の字も微妙に日本のと違ってます。ちなみに藍忘機役の声優さんの名前は

 边江

さんです。日本漢字では「辺」行さんですけど。

 

簡体字も、数見ていくうちに、あっ、草書体をそのまま使ってるな(—東とか)、同じ発音の漢字を流用してるな(—幾とか)だんだん慣れてくると思います。外国語学習の秘訣は“多听,多说,多读,多写‘’(たくさん聞いて、話して、読んで、書くこと)。ご一緒に頑張りましょう!

 

中国国内では、以前はかなり用字の縛りがきつくて、古典文学や歴史書にも簡体字を使わねばならず、元々別の字だったのが同じ字にまとめられたりしていると復元できなくて困ったのですが、最近はさすがに旧字を使うみたいですね。本ドラマでも、劇中の小道具に書かれた文字や手紙などには旧字が使われています。

 

発音(ピンイン)J / L / M / X 
u (Wu) /ü (Yu) / o / ei / an / ang /ian /uan

1 まずはおさらいから wang yi bo

前回のピンインと発音、覚えてますか? 

 

Wáng Yī bó

 

でしたよね。 (前の回はこちら→陳情令で中国語 第0回 - それゆけ! 華流迷

 

‘’wang‘’の最初の音「ワ」は日本語だと1文字なのであまり意識しませんが、実は「ゥア」と発音しているんですね。ゆっくり言ってみると分かると思います。中国語の  「u」は日本語よりさらに口をすぼめ、「a 」は日本語よりも口をたくさん開けるイメージです。「u」「a」と2音にしないで、1音で「ua」と一気に発音します。

 

ピンインの書き方の決まりで、uが単語の最初に来るときはwに置き換え(uang →wang)、uで1語のときは前にwを足してwuと書きます。iが単語の最初に来るときはyに置き換え(iang→yang)、iで1語のとき、後ろにingが来るときはyを足してYi , Yingと書きます。

2 ‘n’と‘ng’

カタカナでは同じく「ン」と書いても、日本語の「ン」の発音には、文字を区別していないだけで実はいくつも種類があります。前回ご紹介した「案外」の「ン」は、言い終わったあと口をあけっぱなしにする‘ng’。そしてもう一つ、言い終わったあと口を閉じ、舌が上あごについている「案内」の‘n’もあります。

 

[発音してみましょう]蓝忘机 Lán Wàngjī

中国語ではこの‘ng’と‘n’の音をしっかり区別するので、聞き分けられるように頑張りましょう。藍忘機は藍の字が‘n’、忘の字が‘ng’で終わるので、練習にピッタリです。

 

 蓝 忘 机 

   Lán   Wàngjī  

 

Lan はラン Lは舌の先を上あごにつけている時間を、日本語よりもやや長めにします。最後の n は「あんない」の「ん」。口を閉じる。

Wang はワン 王一博の「王」と同じ発音ですが、こちらは4声です。最後の「ng」は「あんがい」の「ん」。口をあけっぱなしに。

Jiはジ jは舌の先を下の歯の裏に当てて発音します。日本語の「じ」は舌先をどこにもつけずに発音する方が多いと思いますので気を付けましょう。声調によっては、「イー」と2拍分に聞こえることもあります。

 

では、実際の発音を聞いてみましょう。

 

 

↑ 声優の路知行さん演じる、第20話の魏無羨のセリフからなんですけど、怖っ…。

前回申しましたが、中国では日ごろ親しい呼び方をしている相手に向かって正式名称で呼ぶときは、たいてい機嫌が悪いときです。相手の呼び方について詳しくは、またのちの回にて。

3 2重母音と3重母音

日本語の「あ」「い」「う」「え」「お」を母音(ぼいん)といいますが、中国語の母音は日本語よりも、ちょい数が多いです。すでに登場した‘u’ ‘o’ ‘i’は、日本語の「ウ」「オ」「イ」と全く同じというわけではなく、“u”は日本語の「ウ」よりも口をすぼめ、‘o’ はさらに口びるを丸く、‘i’はさらに口びるを左右に大きく引いて発音します。

 

‘ang’ ‘an’も母音の仲間で、発音の最後が鼻に抜けるので鼻母音(びぼいん)と呼びます。

 

そして、簡単なようで意外にできないのが、1拍に母音が2個入ってる2重母音、3個入ってる3重母音の発音。

 

われらが主人公、魏無羨の名前には2か所も使われてます(泣)

 

[発音してみましょう]魏无羡 Wèi Wúxiàn

魏 无 羡 

Wèi  Wúxiàn 

 

新しいアルファベットはxのみですね。

 

Wei はウェイ uは単語の先頭にくるときはwと書く決まりです。なので、ここの発音は実質uei。3重母音です。ウエーイと切り離さず、一気に発音します。uは日本語の「ウ」よりも口をすぼめ、iは日本語の「い」よりも大きく口を横に引きます。

Wu はウ   声調によってはウー、と長く聞こえることもあります。

Xianはシィェン xは舌の先を下の歯の裏に当てて発音します。日本語の「し」は舌先をどこにもつけずに発音する方が多いと思いますので、違いに注意しましょう。ianは×イアンではなくイェンとなります。イの音を落としてしまいがちなので気を付けましょう。

 

では、実際の発音を聞いてみましょう。

 うっ、これは第1話冒頭で魏無羨を刺し殺そうとしてる江澄の声ですね。ゆっくり発音してくれてるのはいいんですけど…。ま、まあもう1人くらい行ってみますか。

 

 ↑ 先ほどの第20話の藍忘機側のセリフ。こっちも刺し殺しそう。怖っ…。

とりあえずゆっくり発音してくれてますので分かりやすかと思います。2人とも、「イ」の音がくっきりしてますね。 

 

無羨の発音 Wúxiànと同音で別の漢字を使う語に、‘’无线‘’(無線)があります。そのため、ファンがときどき、魏無羨をWi-fiと呼んでいたりします。

 

また、「無限」も同じ発音なんですけど、映画版≪羅小黒戦記≫の吹き替え版を見たら、さすがに主人公の小黑xiǎo hēi は「シャオヘイ」(4声3声で読んでましたけど)だったものの、他の2重母音、3重母音の発音を持つ登場人物の名前はルゥオがロ、ホゥアイがファイと軒並み単純化されていて、無限に至っては「ムゲン」と日本語読みになってました。

 

2重母音、3重母では名前に親しみにくいと判断しての変更なのでしょうね。担当者の方の苦衷お察しいたします。

 

日本語使いの苦手項目「2重母音」「3重母音」、頑張りましょう!

 

4 Ü ウムラート

ドイツ語には同じ発音があると聞いたことあるのですが、「ウ」の口を作って口笛を吹くように唇に力を入れ、「イ」と発音します。カタカナでは「ユィ」と書いたりしてますが、2音ではなく、「ユ」と「イ」の真ん中のような音です。

 

この方のお名前には2か所に含まれてます。↓

[発音してみましょう] 莫玄羽  Mò Xuányǔ

莫  玄  羽 

Mò Xuányǔ

 

最初の は、もー何言ってんのよ、の「もー」です。

Xuán yǔは無理やりカタカナで書くとシュエン ユィーですが、カタカナ発音とは全然違うので、ご自身で音 ↓ を観察してみてくださいませ。

Üは前にy j q x が来ると、上のてんてんを取って単にuと書くので注意が必要です。ここはまさにXが来ているので、ウムラートで読みます。それ以外の箇所に‘’u‘’があったら「ウ」でOK。忘れたら、莫玄羽を思い出してくださいませ!

 

では、第1話から莫玄羽自身が呼ぶ声で聞いてみましょう。

今回の会話:私は〜です。あなたは~ではありません。あなたは誰ですか?

では、第0回のおさらいも兼ねつつ、「私は〜です」「あなたは~ではありません」
「あなたは誰ですか」
と言う会話を見てみましょう。

 

実はブルーレイを見直すまで、こんなマヌケな会話が交わされてるとは思いもしなかったのですが。

 

 第1話 13:10ころから

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第1話から

魏無羨:我是莫玄羽...?

    Wǒ shì Mò Xuányǔ 

    俺、莫玄羽なのか…?

使用人:你不是莫玄羽,你是谁?

    Nǐ búshì Mò Xuányǔ   Nǐ shì shéi   

     莫玄羽でないなら、お前は誰なんだ?

 

●上では場面に合わせて訳してみましたが、直訳すると

 1文目は「私は莫玄羽です」

 2,3文目は「あなたは莫玄羽ではありません、あなたは誰ですか」

と言っていて、日常会話にそのまま使えます。

 

ただし、你是谁?は相手が誰かを尋ねるときのいちばんぞんざいな言い方。第2話にもっと丁寧な言い方が出てくるので、次回はそちらをご紹介しましょう。

 

ピンインは、文章のはじめと固有名詞のはじめは大文字、姓名はそれぞれの頭を大文字にします。また、単語ごとに分かち書きします。

 

では、会話を聞いてみましょう。

 

。現代語では「あたし、僕、アテクシ、わたし」すべて“”でOK!発音はWǒ。

 これも‘u’と‘o’の二重母音。‘o’ のほうを、心持ちはっきり発音します。

 

は英語のbe動詞のようなものです。発音はまた今度。

 否定するときは、直前にを置きます。発音はそもそもはbùですが、後ろに4声が来るとbúと読みます。ここでは後ろが4声なので2声で読んでいます。

 

不是の後ろに単語を代入すると、自分が何者でないかをいろいろ表現できます。

 

是日本人 私は日本人ではありません

是你的粉丝  私はあなたのファンじゃありません

etc,etc...

 

は「あなた、あんた、君」。丁寧語では(ニン)ですが、置き換えれば全て丁寧になるわけではありません。そのあたりもこの先ご紹介いたしましょう。

 

shìのピンインの読み方は先の回で改めてご説明しますので、今回も発音をよく聞いてみてくださいね。

 

では、次回もどうぞよろしくお願いいたします!

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